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木村和平
あたらしい窓


福島県出身の写真家・木村和平の個展を開催します。
日々の生活のなかでふと遭遇した状況に反応して、写真を撮る。木村が写し取った風景を見ていると、時折アルバムをめくっている時のような懐かしさを覚えます。見知らぬワンシーンのはずなのに、遠い記憶が再生され、そこに手が届かないもどかしさも感じます。

写真集「あたらしい窓」に収録の作品をお楽しみください。

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 近い存在であるはずのひとが、動物が、風景が、ふいに遠く感じることがある。それは寂しさや不確かさ、そして触れがたさとなって、短い風のように目の前に現れる。いくら被写体とカメラの距離が近くても、ひとがこちらに笑いかけていても、遠いときはとことん遠い。間に窓があるみたいに、見えるのに触れられない。
 写真はそれらを静かに、そして鮮明に提示してくれるものだが、理解につながるかは別の話だ。わからないことをわからないままにできるとき、私はとても落ち着いている。
 これはなにも暗い話ではない。もちろん悲しくもあるけれど、親愛のなかにある距離を、どこか眩しく思う。

私は四六時中カメラを持ち歩くわけではないし、“撮るぞ”と意気込んで出かけることも少ない。1枚も撮らない日のほうが多いほどだろう。
 これらの写真のほとんどが、2018年までに撮影したものだ。2019年の途中から、写真を取る機会が減った。撮れなかったし、撮らなかった。単純に撮る気持ちになれなかったり、撮ってる場合じゃなかったり、ひととの関係に写真が異物に感じることがあったりと、様々な理由が考えられるが、いずれにしても私は、写真を撮らなかった日のことを肯定したいと思う。カメラじゃ遅すぎる時もあるのだから。
 と、写真が身近なものではないようなことを書いてしまったものの、私は写真がないと全身の関節が外れて消えてしまう!

自分が写真でやりたいことはなんだろうか。常にアンテナを張り巡らせ瞬間を切り抜くことや、求める画のために場を作り込むことはしていない。はたまた、まだ誰も扱っていない新しい表現に注力しているわけでもないだろう。
 日々の生活のなかでふと遭遇した、避けては通れない状況ー相手との意思疎通、すすまない時間、浮動する影、あるいは固定された光ーに反応し、いつも「ちょっと失礼しますね」だとか心で唱えながら、しつこく眺めて写真を撮る。生活の記録…といったものとはまた違うものだ。
 幼い頃の体験や、いまも進んでいる生活に私はおおきな関心と執着がある。前者は独自のアルバムであり、後者は他の誰でもなく、自ら選んで作っていくものだ。住む場所、食事、服装、そして関わる人々までも、自分で決めていい。知らない駅で降りてもいいし、猫と踊ったって構わない。
 数々の体験と選択が、誰とも似つかないひとを形成していく。それぞれにオリジナルのエピソードがあり、その手触りが宿っている服や映画、そして音楽に感銘を受けてきた。それらはごく個人的なものごとを出発点にしながら、受け取るひとが自分のことのように思えるしなやかさと、そこから未知の眺めへとひらいていく豊かさを併せ持っている。私はそれを、写真でやりたい。

展覧会に寄せて・木村和平


日時 2021年3月20日(土)ー4月4日(日)
11:00–19:00/火曜水曜定休
会場 Cyg art gallery
入場 無料
作家プロフィール 木村和平 きむら かずへい

[略歴]
1993年福島県いわき市生まれ。東京都在住。
[受賞]
2018年 第19回写真 1_WALL 審査員奨励賞 (姫野希美選)
2020年 IMA next ♯6 グランプリ
[個展]
2015年「piano」gallery SEPTIMA (東京)
2019年 「袖幕/灯台」B gallery (東京)
2020年 「あたらしい窓」 BOOK AND SONS(東京)
[出版]
2018年 「袖幕」aptp
2019年 「灯台」aptp
2020年 「あたらしい窓」 赤々舎

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