渋谷七奈
きゅうに光があばれだして
2022.10.15−11.9
概要
山形県を拠点に活動するペインター・渋谷七奈の北東北では初となる個展を開催します。渋谷は、人間の精神性とそれらを取り巻く社会について獣や人体の変容として絵画を制作してきました。作品は、記号的なモチーフが分解/再構築された線に依る描き方を主軸としています。これまではフラットな質感や限られた色彩も特徴的でしたが、直近の作品ではそれらは解放に向かっているようにも思えます。
本展では、「ネアンデルタール人が死者に花を供えていた」という言説を着眼点として描いた作品を発表します。
リサーチプロジェクト「MIMIC」の岡本秀から展覧会のコメントを寄稿していただいております。会場でも配布しておりますので、ぜひご覧ください。
展覧会に寄せて・渋谷七奈の言葉
昔、ネアンデルタール人は死者に花を供えていたそうです。これが本当かどうかは、まだ議論されています。それでも個人的に思うのは、目を覚まさない人たちが、生きているときに美しいと思ったものに少しでも囲まれるように、という願いが込められているのではないかと考えてしまうのです。目覚めたら、遠くへ行くなら、この花と一緒に旅をしてほしい。ネアンデルタール人が温かい人間的な感情を持っていたという私の希望的観測は、死者を悼むということが大昔から循環していることを現代でも信じたいがためなのだと思います。このことは、人間の儀礼的な習慣が、個人と組織的なエゴイズムに基づいてきたことを私に感じさせるのです。
渋谷七奈
きゅうに光があばれだして
会場
Cyg art gallery
(〒020-0024 岩手県盛岡市菜園1-8-15 パルクアベニュー・カワトク cube-Ⅱ B1F)
日時
2022年10月15日(土)ー11月9日(水)
10:00–19:00
作家在廊予定
10月15日(土)、11月9日(水)
※休憩などで不在の時間帯があります。ご了承ください。
入場料
無料
作家プロフィール
渋谷七奈/SHIBUYA Nana
宮城県生まれ
2019年 東北芸術工科大学 大学院 芸術文化専攻 修了
外界と接続しながら揺らいでいく人間とその精神性について、獣や人体の変容という形で、絵画を発表。近年は過去起こったことや、アノニマスな記憶、個人的なイメージをドローイングや絵画で描いている。
[受賞歴]
2021 | 群馬青年ビエンナーレ2021 入選 |
2019 | ART AWARD TOKYO MARUNOUCHI 2019 加藤泉賞 受賞 |
2015 | シェル美術賞 2015 保坂健二朗賞 受賞 |
[個展]
2022 | 「Near and far view」artists space TERRAIN(京都) |
2018 | 「dope man」BOTAcoffee Gallery(山形) |
[グループ展]
2022 | 第16回ひじおり灯篭絵展示会 “ひじおりの灯”(山形) “gird” biscuit gallery (東京)”TUAD-ART LINKS” A-新宿高島屋(東京) |
2021 | 第15回 ひじおり灯篭絵展示会 “ひじおりの灯”(山形) “群馬青年ビエンナーレ2021″ 群馬県立近代美術館(群馬) |
2020 | “シグセレクト2020″ cyg art gallery (盛岡) 山形ビエンナーレ2020 “まちとひと” TOMIHIRO Building (山形) |
2019 | “ART AWARD TOKYO MARUNOUCHI 2019” 行幸地下ギャラリー 丸の内 (東京) “KUMA EXHIBITION 2019” スパイラル(東京) |
2018 | 擬似マウンテン CALM&PUNK Gallery(東京) 山形ビエンナーレ “山のような100ものがたり” 東北芸術工科大学(山形) “floater” BOTAcoffee Gallery(山形) |
ウェブサイト・SNS
過去作品画像
寄稿
居ることのかなたへのあいさつ/岡本秀
他者との別れに直面した時、それでも人の生活は続いていく。別れた者は、その経験を何度も反芻し、そのたびに他者を失いなおし、自身の思い出と向き合っていく必要がある。
それは、喪失の体験によって〈分解〉された心のかたちを、現実的な日常的行為とともに〈再構築〉し、秩序だてていく過程であるとも言えるだろう。
「きゅうに光があばれだして」は、渋谷がかつてみた、強烈な光景に由来したタイトルだという。
50点近くに及ぶ本展の作品群は、この個人的な光景の記憶と、渋谷にとっての死者との関係のあり方をめぐって展開される。これらの個人的なリアリティは、渋谷のモチベーション(動機)として、「ドローイングオンキャンバス」という制作手法や絵画の質に結実している。
渋谷は、これまでの「作品をつくる」という格式ばった心持ちからやや力を抜き、日々のルーティーンの延長として、ラフに絵を描いていきたいと語る。そうした制作行為を、渋谷は「おはようとおやすみを言う」ような習慣的な儀礼になぞらえる。一方でその「おはようとおやすみ」は、目を覚まさない他者に対しての手向けのように、切実で厳粛な気配を帯びている。
「目覚めたら、遠くへ行くなら、この花と一緒に旅をしてほしい。」
仮に、渋谷の制作における習慣が、目覚めぬ者へと繰り返される「おはようとおやすみ」であるとするなら、渋谷の絵は、手向けられた花そのものなのだろう。
(大昔、旧人類のそれもそうあったかもしれないように、)
その花にはしなやかで強い願いがこもっている。もしもその人が目覚めたら、嬉しいと思えるものになるように。
ー
岡本秀(MIMIC)
1995年奈良県生まれ、京都府拠点。
2020年京都市立芸術大学大学院 美術研究科絵画専攻日本画修了。日本画で学んだ実物写生やデッサンの考え方を軸に、主に平面イメージを扱って制作を行う。
並行して、アーティストの個人的な複雑さや機微から作者・作品の語り方を探るためのリサーチプロジェクト「MIMIC」を企画する。
(2022年4月京都で行った渋谷へのインタビューはこちらから読めます。https://kuma-foundation.org/news/6039/)
協賛
公益財団法人クマ財団
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